実践本

税務署員だけのヒミツの節税術【個人事業主の節税の教科書!】

著者:大村大次郎/中公新書
概要 あらゆる領収書は経費で落とせる(副題のまま)
ターゲット 個人事業主で攻めの節税をしたい方
おすすめ度 ★★★
残念度 ☆(平成30年発売の最新版がよりおすすめ)
発売日 平成24年12月10日

どうもお久しぶりです。
覆面税理士Kです。

今回は「節税本」の大家の大村先生の著書の紹介です。本書は『あらゆる領収書は経費で落とせる』シリーズの『確定申告編』になります。

税金面でみれば、個人事業と会社経営の最大の違いは経費の扱いではないでしょうか。会社の経費基準は「会社で使用するものか否か」に尽きるので非常に明解です。極端に言えば、会社のために買ったものの、ほとんど使用しなかった場合でも、きちんと利用記録等をつけていれば、経費計上は可能といえます。

これが個人事業主となると「仕事利用と私的利用の案分」が最大の問題になります。その理由は、肝心の案分基準が税務署側からも明示されていないからです。とにかく「仕事利用」分だけを確定申告時の経費に入れろというわけです。

このような経費の中でも、一番の悩みどころは「家賃」ではないでしょうか。個人事業主の場合、自宅兼仕事場となっていることも多々あると思われます。

この「家賃」の案分について、大村先生は一部例外はあるとしつつも、本書で下記のように述べています。

『平たくいえば、だいたい家賃の6割程度ならば、大丈夫です。この程度だったら、普通は税務署から文句は出ないはずです(pp.75-76)。』

通常のパターンで、6割OKというのは納税者にとってはかなりありがたいのではないでしょうか。

どうしても会計事務所的な感覚でいえば、まず「案分比率を税務署に否認されたくない」というのが大きくなりがちです。そのため実際の部屋の使用比率をもとに概算し、多くても4割~5割の経費計上を提案することが多いかと思われます。

また、この考え方に基づくと仕事場兼自宅がワンルームの場合は、より消極的な使用比率の概算となり、提案する経費計上も少なくなる傾向にあります。

しかし、ワンルームの場合の大村先生の見解は下記になります。

『若いフリーランサーなどは、15㎡程度のワンルームに住んで、仕事もそこでやっているようなケースが多いようですが、そういう場合は8割以上を経費に計上しても、税務署は文句をいえないはずです(p.76)。』

こちらも節税的にかなりインパクトのある数字かと思われます。もちろん自宅で仕事をしている人が前提とはなりますが、8割経費計上OKであれば、確定申告時にかなり助かるはずです。

このように本書では、会計事務所では少し消極的になりがちな経費計上についても、元国税OBである大村先生の(税務署内の)経験則から、かなり積極的なガイドラインを提供してくれます。

ただ、本書発売が平成24年ですので、その後の税制改正の影響で記述が古くなってしまった箇所もあります。そういう意味からも、よりパワーアップしていると思われる平成30年発売の同シリーズ最新版を読まれることをお勧めします。

特に税理士に依頼せずに確定申告を行いたい方にとっては、攻めの節税「実践本」になるのではないでしょうか。