実践本

高齢社会の税務【地味にムズい高齢者の税金!】

著者:鹿田良美 出川洋 丸田隆英 田中俊男
概要 高齢者対応の税務テクニック&理論
ターゲット 年配のクライアントが多い会計事務所勤務者
おすすめ度 ★★★★
残念度 ☆(関係者向き)
発売日 平成26年10月5日

みなさんお元気ですか。
ストレスフルな水曜日。
本日も余裕の37.4度、
体調やや悪の覆面税理士Kです。

本日は「高齢社会の税務」のご紹介です。
かなり地味な表紙、
そして地味なタイトル。
しかし内容はかなりパワフルです。

本書は、「税務質問」、「答え」、
「解説」、「コメント」の
シンプルな4部構成になっています。

内容は、出だしから、
『個人事業者の債務免除益』、
『譲渡した土地の取得費が不明な場合』
かなり実践的なラインナップが並びます。

個人事業にしろ、法人にしろ、
借入金は相続時の大きな難所になります。
相続評価が額面評価になるため、
長年の資金投入の結果、
赤字経営で、
実際価値がほとんどない場合でも、
額面評価しなければなりません。

その一つの解決策が、
借入金等の債務免除になります。

通常、債務免除を行えば、
利益計上しなければなりません。

しかし債務免除直前において、
著しい債務超過がある場合は、
一定の条件下で課税は免れます。

本書では、税法等に基づく解説の後、
認められた(否認された)裁判例等、
をもとに、判断基準の注意点にも言及しています。

また、土地の取得費についても、
意外と知らない人も多い、
「市街地価格指数」方式の妥当性について、
裁決例をもとに論理的に解説しています。

超有名な5%の「概算取得費」と比べ、
かなり有利な(実態に基づいた)
評価が可能な場合も多く、
今まで「市街地価格指数」方式を
未経験の方は必読です。

ただし、根拠となる裁決から
10年以上が経過し、
拡大解釈を否認する裁決例も
何点か見受けられます。
よって最近では、
慎重な意見も出ていますので、
念のため、利用時にはご注意ください。

基本、納税者目線で、
判例、裁判例、裁決例を紹介しているため、
あまり触れてこなかった層の方にも、
わかりやすくまとめられています。

特に、法人税の債務免除益の項目は、
個人的には非常に参考になりました。

昭和56年2月25日浦和地裁判決では、
「~略~同族会社以外の者が行なう単独行為は、
その第三者が同族会社との間に行う契約や
合同行為とは異なって、同族会社の法律行為が
介在する余地のないものである以上、
『同族会社の行為』とは相容れない概念であると
いわざるをえない。」旨を判事しています。(p.152)

裁判において、
「単独行為」は「同族会社の行為」とは
全く異なる概念として定義されています。

よって、債権放棄(会社側では債務免除)が
「単独行為」に該当する場合、
そもそも「同族会社の行為否認」を
適用することなどできないことになります。

最強のラスボスと対峙するリスクを
論理的に回避できるようなものです。
本当に勉強になります。