知識本

間違いだらけの相続税対策【最大の節税法は110万贈与!】

著者:秋山清成(中央経済社)
概要 41年の国税庁勤務に基づく調査実例
ターゲット 富裕層もそうでない人も
おすすめ度 ★★★(最初の一冊に最適)
残念度
発売日 平成28年3月10日

みなさんお元気ですか。
覆面税理士Kです。

本日は、国税庁勤務41年、
元超ベテラン調査官の
秋山清成先生の相続本の紹介です。

数ある国税OBの「節税本」。
その中でも秋山先生の勤務歴は、
個人的にはダントツです。

調査官目線を主軸に置きつつ、
税務調査における
納税者の失敗例だけでなく、
相続の基礎知識、さらには
家族間対応の失敗例まで、
幅広い内容をカバーしています。

確かに経験則による記述は、
暗黙の説得力があり、興味深いです。

『私は、5億円を超すような資産家の相続争いは見たことがありません。
ここがテレビドラマとは全く違うところです(P.115)。』

「金持ちケンカせず」
昔からある故事成語の部類です。

秋山先生によると、
数億円の資産があれば、
同様に相当程度の預貯金の存在も
考えられるとのこと。

預貯金も多く、
納税資金が十分ある場合、
あえてリスクをとってまで
相続争いをする必要がないわけです。
(まさに「金持ちケンカせず」)

逆に、資産が少なく、
実際の預貯金も少ない場合、
納税資金の捻出のため、
不動産等の売却が必要となります。

それが相続争いを
引き起こす原因に
なりやすいとのこと。

では、相続争いを回避するため、
どうすればよいのでしょうか。

『オーソドックスですが、何と言っても贈与税の110万円の基礎控除を使った節税策が一番です(P.175)。』

41年の国税庁経験を踏まえた、
秋山先生による最適解は、
「110万円の暦年贈与」ということです。

一見、地味に見えますが、
「子供への110万円贈与」、
「孫への110万円贈与」、
これらを重複的に使用することで、
贈与額を増額することもでき、
さらには次世代以降への相続対策も
同時に行うことが可能になるとのことです。

また、相続税対策として
よく手法として挙げられる
111万円等の贈与税申告について、
それだけでは十分でないと
指摘しています。

『贈与税申告は贈与が成立されている証拠にはならない(P.161)』

贈与が成立しなければ、
名義預金と判定されてしまいます。

贈与成立の判定について、
「申告事実」といえども、
あくまで複数ある判定基準の
一つでしかないとのこと。

税務署側の見解も同様と思われます。

本書は特に、
実体験に基づく、
証拠書類の取扱いに重点を置き、
記載されています。

最初に読む「相続本」として、
おすすめの一冊です。