コラム

書評以外の話【連年相続】

コラム⑤連年相続

みなさんお疲れ様です。
覆面税理士Kです。

今回も諸事情(ネタ切れ等)により、限りなく書評でありません。
本ブログはテスト運用なので、どうぞご容赦ください。

「(念のための)注意書」
本投稿は何らかの税務処理を
推奨するものではありません。
実際の税務処理の検討等については、顧問税理士にご相談ください。

本日は「連年贈与」のお話です。

「暦年贈与」については、ほぼすべての相続本で紹介されており、節税面においても、諸先生方の評価もかなり高いです。

難しいスキームを考えるよりも、毎年110万円ずつ贈与する方が、税金もほとんど払わなくて済み、スタンダードですが、一番効果的な節税法といえます。

特に親族的な制限もありませんので、孫、子の配偶者等、人数が増えれば、1,000万円程度であっても、数年で移動させることも可能です。

ただ、「暦年贈与」にも何点か注意点があります。その中の一つが、今回の「連年贈与」になります。

「連年贈与」とはいったいどのようなものか。それらも踏まえ、根拠とも言える国税庁のタックスアンサーを以下に抜粋します。

『ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります(国税庁HP タックスアンサー No.4402)。』

契約に基づく税金逃れのための計画的な分割贈与は、総額で税金を計算するというものです。

これにより、例えば、毎年の贈与金額を少しズラしたり、毎年の贈与日を同じ日にしないようにする等、「連年贈与」と認定されないための、いろいろな防御策が提案されたりするわけです。

ただ、「連年贈与」の前提となる「契約」について、実際には口頭であったり書面であったりと様々なケースが存在し、認定は容易ではありません。

調査官の指摘をそのまま認めてしまえば、その後の否定は難しいかもしれません。しかし、贈与はあったが「契約」はないと主張できれば、次はその「契約」の存在について、調査官側が証明する必要があり、調査官にとってもかなり分が悪い状況となります。

実は、この「連年贈与」の答えについては、先日紹介した書籍『相続税の税務調査を完璧に切り抜ける方法』にはズバリと記載されています。

『「お前に1000万円を10年に分割して贈与する」といった内容の契約書でも出てくれば話は別ですが、たまたま同じ日に同じ金額の贈与があったことをもって、直ちに「連年贈与だと認定することはできません(pp.150-151)。』

『このような場合には、「確かにそのような贈与はありました。しかし、それはそのときそのとき、すべて完結した贈与であり、連年贈与などではありません。もし、連年贈与というのであれば、それを税務署さんのほうで立証してください」と返すようにしましょう(p.151)。』

非常に明快な返答例です。服部先生、本当に恐れ入ります。

他の税理士の方からも、納税者が思うほど税務署側では「連年贈与」を意識しておらず、実際の裁判でも納税者敗訴事例があるわけではないと聞いたことがあります。

本日はそんな、少し過大評価されがちな「連年贈与」のお話でした。